皆既月食の撮影方法をカメラ初心者に教えて、実際に撮影して貰った。
みなさんご存知でしょうが10月8日は皆既月食というイベントがありました。今回はそんな皆既月食に起こった出来事です。
2015年の4月4日にも皆既月食を観測することが出来るようなので、お見逃しの方はチャレンジしてみてください。
「もうすぐ来ちゃうな・・・まずいなー・・・。」
人物紹介:吉野
皆既月食に命を捧げ、日々皆既月食とは無縁の写真を撮っているカメラマン。皆既月食があるのを当日知った。
「こんばんわー!吉野さん申し訳ないです、遅くなっちゃってー!」
人物紹介:古川くん
若さ故の過ちを認め、現在専門学校に通っているクリエーターの卵。学業を疎かにして、日々女生徒とイチャイチャしている破廉恥なやつ。
そう、今日は古川くんに「物撮り」を教える日なのだ。しかし、私の頭は「皆既月食」のことで一杯で、古川くんに「物撮り」を教えれる状態じゃない。悪いが今日は帰ってもらおう。
だが古川の野郎!遅れてきたのにまるでなっちゃいない!帰らせる前に教えちゃろう。社会の厳しさを!
GREENMONSTERオフィスにて
- 「今日は物撮り教えていただけるんですよね!忙しいのにありがとうございます。」
- 「古川くんさ・・・遅れてきたならさ・・・誠意とかさ・・・ほら。ねぇ?」
- 「本当にすみません。お金・・・ですか・・・学生なので全然持ってなくて・・・。」
「金のねぇ学生は帰って寝てろ!!!」
「酷い!うわーーーん!」
そうして古川くんは帰っていった。私は罪悪感を少し抱いたが、きっといつか古川くんは「あの時、吉野さんが叱ってくれたお陰で・・・」となるはずだ。私はそういう計算もできる人間である。そんなことを思っていると「皆既月食」を撮るテンションもあがってきた。
こうしてはいられない!早く撮りにいこう!
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ガチャッ
「・・・・・・・・・・・」
- 「うわあああああああああああああああああああ!・・・え?ふ、古川くん!?」
- 「・・・」
まだ帰っていなかったようだ。なんだか凄く怒っている気がする。怖い。顔も怖いが、沈黙も怖い。なぜ何も言わないのか・・・まさか見透かされていたのだろうか?約束を破って皆既月食を撮りにいこうとしてることを。
もう、全て打ち明けよう。きっと解ってくれるはず・・・。
- 「古川くん・・・実は・・・・」
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- 「そうだったんですねー!早く言ってくれれば良かったのにー。じゃー皆既月食を撮るついでに撮り方教えてくださいよー!」
- 「それで怒りが静まるんだったら、お願いしたいくらいだよ。」
- 「いやいや、全然怒ってないですよー!さっきのは急にお腹が痛くなっちゃって、トイレを借りようと戻ってきたんですけど・・・もう出ちゃったんで大丈夫です!」
- 「え、ちょっとまって・・・え!?」
- 「まぁまぁ、もう月が陰りだしてますよー。早く吉野さんの車でいきましょう!」
そう言って彼は一目散に私の車の助手席に駆け込み、私は涙を流しながら月が見えるスポットまで車を走らせた。
福岡某所
「では、ここらで撮影しようか。古川くんはこのミラーレス『Nikon 1 J4』を使って。レンズは『1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6』というのを付けてあるよ。」
「ありがとうございます!これで撮るんですねー・・・あと、心なしか冷たいのは気のせいですか?」
- 「古川くん、カメラの世界はやるかやられるかだよ!僕は心を鬼にして君に教えなくてはならない。覚悟してください。」
- 「そうなんですね・・・わかりました!」
- 「まずは今の古川くんのレベルを知る必要があります。とりあえず、撮ってくれるかな?」
- 「はい、いきますよー!」
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カシャッ!
- 「見るのもつらい。」
- 「すみません・・・。」
- 「普通の月を撮る場合は手持ちでも簡単に撮れるんだけど、月食は暗くてピントが合わせずらいし望遠レンズを使うから、三脚を用意するといいよ。」
- 「なるほど、わかりました!」
- 「これでいいですかね?」
- 「オッケーです。三脚を使うときは『手ブレ補正』は『オフ』にしたほうがいいよ。逆にブレてしまうことがあるからね。」
- 「うっかり忘れそうです・・・。」
- 「次にシャッタースピードだけど、秒単位で設定すると月や星の位置の変化、風や振動のブレも拾い易くなるから、大体1/4よりも速い設定が良いよ。」
- 「細かなとこまで考慮しないといけないんですね・・・臨機応変さが必要ですね。」
- 「今回の撮影は『皆既月食』を『記録』として残したいから、ホワイトバランスは目視した色に忠実な設定にしましょう。確認してみて。」
「・・・目視・・・若干赤いですね。これならオートが一番忠実ですかね?」
- 「うん、そうだね。オートで良いと思う。その顔じゃ無ければさらに良いよ。」
- 「戻します。」
- 「あとは、解像力の高い『F8』で撮影、明るさはISOでコントロールするようにしようか。」
- 「最後にピントは液晶を拡大してマニュアルで合わせて撮ってみて。」
- 「よし。大体こんなもんかな・・・。じゃーいきますよー!」
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カシャッ!
- 「うん、いいじゃーないのー。」
- 「おー!最初の写真が嘘みたいです!!僕にこんな潜在能力があったとは・・・吉野さんありがとうございます。」
「じゃー僕も撮ろうかな。」
- 「そのカメラ、ゴツいですね。」
- 「これは『Nikon D4S』で、レンズは『Ai AF VR Zoom-Nikkor 80-400mm f/4.5-5.6D ED』というのを使っているよ。」
- 「え、いま呪文かなんかいいました?」
- 「・・・じゃ、撮りまーす。」
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カシャッ!
(カメラ内にてトリミング)
こうして無事に皆既月食の撮影を終え、私は古川くんを知らない土地に置き去りにして帰った。
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